トラウマの治し方5選|PTSDとの違い・記憶の対処法・克服までの流れを公認心理師が解説
「トラウマって、本当に治るの?」「過去の記憶は消せないの?」
過去のつらい出来事がふと思い出され、心がざわつく、息苦しさを感じる、そんな経験はありませんか?いじめやパワハラなどによってできた“心の傷”は、自然に癒えるとは限りません。しかし、トラウマの記憶を「なかったこと」にできなくても、その苦しみや不安を和らげ、より生きやすくすることは十分に可能です。
本記事では、公認心理師がトラウマの治し方として有効な5つの方法をわかりやすく解説します。また、PTSDとの違いや克服までの流れ、さらには、ご自宅で取り組めるセルフEMDRを活用した対処法についてもご紹介します。あなたがこのトラウマにまつわる不安や疑問を解消し、少しでも心が楽になるよう、具体的な治し方と対処法をお伝えします。
トラウマは本当に治る?記憶は消える?
「トラウマは治るのでしょうか?」「トラウマの記憶は消える?」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。
残念ながら、過去のつらい出来事そのものの記憶を完全に消し去ることはできません。しかし、その記憶に伴う強烈な感情(恐怖、不安、怒りなど)や身体反応(動悸、発汗など)を和らげ、日常生活に支障が出ないレベルにまで克服することは可能です。
トラウマ治療の目的は、記憶そのものを消すことではなく、その記憶に心を支配されず、今ここを安心して生きられるようになることです。適切な治し方を見つけ、段階的に取り組むことで、トラウマによる苦しみから解放され、前向きな未来を築くことができます。
トラウマの治し方5選とそれぞれの効果
ここでは、トラウマ治療に有効と考えられている具体的な治し方を5つご紹介します。
トラウマの治し方①:安心できる環境を整える
トラウマを克服する上で、重要なのが「安心・安全」を感じられる環境を整えることです。過去の体験により心が常に警戒している状態では、どのような治療も効果を発揮しにくいでしょう。
職場や人間関係で継続的なストレスを感じていると、心はいつまでも休まらず、休息しても回復しにくい状況が続きます。まずは、今の生活状況や人間関係が自分にとって安心できるかを見直してみましょう。
- 生活リズムを整え、十分な睡眠と休息をとる。
- 無理のない人間関係を構築し、信頼できる人と繋がる。
- 必要であれば、一時的にストレス源から距離を置く(転職、休職など)。
このように安心できる環境を整えることは、トラウマケアの土台となり、心の回復への第一歩となります。
トラウマの治し方②:呼吸を意識して「今ここ」に戻る
つらい記憶を思い出すと、呼吸が浅くなる人は少なくありません。呼吸が浅い状態は、体が「危険!」と認識してSOSを出している反応です。この身体反応は、過去の恐怖が今も続いているかのように感じさせてしまいます。
1日数分でもよいので、ゆっくりと深く呼吸する時間を持ちましょう。「吸う:吐く=4秒:6秒」くらいのペースで、お腹を膨らませながら呼吸することがコツです。呼吸に意識を向けることで、心を“今ここ”に引き戻し、不安や恐怖から一時的に離れて安心感を取り戻していきましょうね。これはフラッシュバックが起きた際の即効性のある対処法としても有効です。
トラウマの治し方③:タッピングで身体の緊張をほぐす
トラウマの影響は心だけでなく、身体にも症状として現れることが多くあります。肩こり、胸の苦しさ、不眠、胃痛などは、トラウマによる身体反応の一例です。
そのようなときに「タッピング」を試してみてください。タッピングとは、指先の腹を使ってご自身の体を左右交互に軽くトントンとタッチする方法です。これにより、自律神経のバランスが整いやすくなり、不安や緊張が和らぎます。すぐに日常生活に取り入れられる治し方として、フラッシュバックや強い不安を感じる際にもやってみてください。
トラウマの治し方④:認知行動療法を受ける
認知行動療法(CBT)は、トラウマを治す効果が期待されている代表的な心理療法の1つです。つらい記憶や体験にまつわる思考のクセや行動パターンを見直し、少しずつ生活の幅を広げていきます。
トラウマはPTSD(心的外傷後ストレス障害)との関連も深く、厚生労働省でもPTSDの治療法の1つとして認知行動療法がマニュアル化されています。治療の期間は個人の症状や体験の深さによって差がありますが、数ヶ月から1年ほどをかけて専門家と取り組むケースが多いです。
トラウマの治し方⑤:EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)を受ける
トラウマやPTSDの治療法として、近年特に注目されているのがEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)です。
EMDRは、トラウマ記憶に意識を向けながら、特定のリズムで眼球運動を行うことで、心の整理を助ける心理療法です。通常のカウンセリングでは届きにくい身体反応(恐怖で体が固まる、フラッシュバック時の動悸など)へのアプローチが可能となっており、過去の出来事を脳内で再処理することで、その記憶からくる苦しみを和らげる効果が期待されています。
EMDRは幅広いトラウマ体験に対応できますが、日本では専門として活動しているカウンセラーはまだ少ないのが現状です。しかし、その高い治療効果から、トラウマの治し方として今後ますます注目されていくことでしょう。
トラウマとPTSDの違いとは?共通点と症状
「トラウマ」と「PTSD」は混同されやすい言葉ですが、厳密には異なる概念です。
トラウマとは?
トラウマとは、事故や災害、暴力、いじめなどの出来事によって心に大きなショックを受けた「心の傷」そのものを指します。誰もがつらい経験をした際にトラウマを抱える可能性があり、これは一般的な心の反応です。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?
PTSDとは、トラウマ体験後も長期間(一般的に1ヶ月以上)にわたって、特定の症状が継続し、日常生活に大きな支障をきたしている状態を指す「精神疾患」の診断名です。
- フラッシュバック(当時の体験が今起きているかのような感覚)
- 回避行動(関連する場所や人、話題を避ける)
- 過覚醒(常に警戒し、眠れない、イライラするなどの症状)
- 感情の麻痺(喜怒哀楽を感じにくい)
すべてのトラウマがPTSDになるわけではありませんが、PTSDへと進行する前に早めの対処が回復へのカギとなります。
トラウマとPTSDの共通点とは?
トラウマとPTSDのどちらも、「過去のつらい出来事」がきっかけとなって症状が出現する点は共通しています。どちらも心の深い傷であり、本人にとって大きなショックであることに変わりはありません。
トラウマを克服するまでの期間は?
トラウマの克服にかかる期間は、体験の性質、個人の状況、受ける治療方法などによって大きく異なります。数ヶ月で症状が落ち着く人もいれば、数年にわたるカウンセリングや治療が必要なケースもあります。
大切なのは、焦らず、ご自身のペースで克服の過程を進めることです。
トラウマの治し方に悩んだら「セルフEMDR」という選択肢
トラウマは、決して一人で向き合わなければいけないものではありません。専門家のサポートや、適切な治し方を見つけることが克服への近道です。
トラウマの治し方はさまざまですが、なるべく身体的・精神的負荷が少なく、かつ効果を期待できる方法を望む方にはセルフEMDRがおすすめです。セルフEMDRは、公認心理師が監修しており、ご自宅で安全に取り組めるよう設計されています。過去のつらい出来事による「今の苦しみ」を和らげ、フラッシュバックや不安などの症状に対処するための有効な方法です。
セルフEMDRのより詳しい情報は、当サイトのトップページでご確認いただけます。ぜひ、トラウマによる生きづらさを克服する新たな手段として、セルフEMDRをぜひご検討ください。
トラウマを抱えている人向けのセルフEMDRツール「PURELY」の使い方について
セルフEMDRは公認心理師が開発した、ガイドに沿って安全に行えるセルフケア方法です。家庭で試せる手軽さがあり、気持ちの整理や自己理解の手助けとなります。生きづらさ克服の第一歩として、セルフEMDRを活用してみませんか?
セルフEMDR療法を効果的に行うためには、まず「ターゲット(処理する記憶)」を明確に同定することが非常に重要です。以下では、トラウマに悩む32歳女性クライアントを例に、専門的かつわかりやすくターゲットの見つけ方を説明します。
EMDR療法における「ターゲット」とは
EMDR療法における「ターゲット」とは、現在の心理的苦痛の原因となっている記憶・イメージ・出来事のことを指します。これを特定することで、その記憶に関連する否定的な信念や感情を処理し、今の生きづらさを軽減できます。
クライアントプロフィール(例:32歳女性 会社員)
- 年齢:32歳女性
- 悩み:人間関係がうまくいかず、生きづらさを感じている。過去のいじめや職場でのパワハラ体験から、フラッシュバックや強い不安感に襲われることがある。
- 背景:「トラウマを抱えているのでは?」と自己認識している。自己流で克服しようとしているが限界を感じている。
- 幼少期:親の顔色を常にうかがい、安心して甘えられなかった経験がある。
セルフEMDRの始め方3ステップ
1.現在のつらい場面を思い出す
まず、現在起こっている具体的なつらさから始めましょう。
例:職場の人に少しきつく言われただけで涙が出てしまう / 友人からLINEの返信が遅いだけで「嫌われたかも」と感じる
→ このような出来事を「引き金(トリガー)」と言います。
2.記憶に伴うイメージ・感情・身体感覚を整理する。
その過去の記憶が思い出されたときに浮かぶ以下の3つを整理しましょう。
o 映像(イメージ):例)母の怒った顔、泣いている自分
o 感情:例)怖い、悲しい、恥ずかしい
o 身体感覚:例)胸が締めつけられる、喉が詰まる感じ
→ これらを明確にすることで、セルフEMDR時の焦点が定まり、より効果的なセッションにつながります。
3.引き金から、過去の体験に遡る
引き金となった出来事を思い出しながら、「それと似たような気持ちになった過去の場面」が上がってくるかもしれません。
- 例:子どもの頃、母親が怒るのではないかといつもビクビクしていた / 何か失敗すると「ダメな子」と責められた記憶がある
→ こうした「最初に似た気持ちを抱いた体験」がターゲットになり得ます。
セルフEMDR実践のヒント
- セルフEMDRを実践する際は、まずは今抱えている困りごとをターゲットとして選びましょう。ガイドに従って眼球運動を行っている間に、それに関連する過去の場面や記憶が自然と浮かんでくることがあります。その際は、無理に追い払おうとせず、浮かび上がってきた記憶や感情も同時に意識しながらセルフEMDRを続けてみてください。
- 複数の記憶がある場合は、最近の出来事や、比較的感情の強さが低い記憶から手をつけるのがおすすめです。そうすることで、心に負担をかけすぎず、徐々に昔の記憶へと無理なく進んでいけるでしょう。また、無理に思い出そうとせず、ご自身が安全で落ち着ける場所で行うことが大切です。
トラウマを抱えている人向けのセルフEMDRができる「PURELY」を使ってみよう
「今のつらさ」を入口にして、「その気持ちを最初に感じた記憶(ターゲット)」を探る。そして、その記憶に付随するイメージ・感情・体感を明確にする。それをセルフEMDRで処理することで、現在の悩みの根が和らいでいく。
このプロセスを丁寧に踏むことで、セルフEMDRの効果が高まり、トラウマに起因する生きづらさにもアプローチできます。
ぜひPURELYを活用して本来の健やかな自分を取り戻しませんか?あなたのトラウマ克服をサポートします。
